こんにちは、藤野雄太です。
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あらゆる生き物は、歳をとるにつれて老化します。
老化は生き物の運命と言っていいでしょう。
しかし、老化とは無縁の「最強の生き物」がいます。
今日は「最強の生き物」をテーマに探究します!
【2022/7/17日経新聞】
私たちは年を重ねるにつれて老いていく。それは自然の摂理で、生物の宿命ともいえる。
ところが、その運命から逃れ、老化とはほとんど縁の無いカメの一群が見つかった。
生物の新たな側面に光を当てる発見に、生き物好きの間ではカメの話題で持ちきりだ。
私たちのような生物の常識では、年をとると肉体は衰え、いずれは死ぬ。加齢に伴って死亡のリスク(死にやすさ)はぐんと高まる。
ネズミ(マウス)のような生物でも同じだ。こうした過程を老化と考えれば、生物には加齢(老化)に伴って生涯を終える一定の法則があると統計上はみなせる。
この法則に従う生き方こそが生物を生物たらしめていると考える人々にとっては「老いを知らないカメ」の発見はにわかに信じがたい。
だがスピーシーズ360の一員で同大准教授のフェルナンド・コルチェロ博士は、一部のカメはこの法則が成り立たないと即答する。
カメでも加齢で死亡リスクは上がるようだが、極めて遅くて傾向がつかみにくい。
「特定の年齢間隔でみると死ぬ割合は同じ」。事実上、老化はないのだ。
一般の生物は大人になると成長をやめる。
繁殖にエネルギーを注ぐためだ。
それと引き換えに体内で傷んだ細胞の修復作業がおろそかになり、老化が進む。
カメは成熟しても成長が止まらない。
「細胞の修復機能も維持しているはずだ。だから老化現象が表れないのだろう」
加齢現象を研究する東京大学医科学研究所の中西真教授は今回の発見の意義を「老化が全ての生物で必ず起きる必須の現象ではないという新たな可能性を示した」と評する。
カメとヒトは全く違うが、新発見に対して「カメは特別」という冷めた見方は感じない。
その理由に、過去に見つかった「老化しない哺乳類」の存在がある。
アフリカにすむハダカデバネズミも米国の研究で死亡率が一定だといわれていると明かすのは熊本大学の三浦恭子准教授だ。
21年には東大の中西教授らが、老いたマウスから肉体の衰えにつながる「老化細胞」を取り除く実験に成功したと米科学誌に発表した。
後戻りできないとされた老化の段階から若い状態に戻せた成果に「老いは克服できる」と衝撃が走った。
老化をしないで年をとる世界とはどんなものなのか。
ヒトでは老いが年齢や生きざまと結びつき、その人らしさを形づくる。年齢と老いの関係が絶たれたら年齢は出生からの経過を示す「数字」と化すだけだ。
カメも永遠に生き続けるわけではない。
敵の攻撃やケガ、病気に見舞われたら命を落とす。
老化を回避できるようになった以上、早死にしたら元も子もない。
身を守る大きな甲羅を携え、跳び回らない生き方を選んだのは不測の事態を避けるために違いない。
老化という予期できる死を免れたカメの世界も、生きる苦労は多いのかもしれない。
【語句の意味】
★摂理(せつり): 自然界を支配している理法。
理法:のっとるべき道理。規則。法則。
★一群(いちぐん): ひとむれ。一団。
★老化(ろうか): 年をとるにつれて生理機能がおとろえること。
[広辞苑 第七版]
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