「さっき教えたばかりなのに、また同じ間違いをしている!」
「何度も説明しているのに、どうして理解できないの?」
「毎日勉強しているのに、なかなか成績が上がらない……」
こうした悩みを抱えている保護者の方は、多いのではないでしょうか。
私も長年、教育現場で子どもたちを指導する中で、同じような悩みを持つお母さん、お父さんに数多く出会ってきました。
そして、教育現場で特に気になっていることがあります。
それは、真面目に勉強し、問題演習にも取り組んでいるのに、ある時期から学力が伸びなくなってしまう子どもが少なくないということです。
実は、こうした問題の原因は、単なる勉強不足や練習不足だけではないかもしれません。
子どもが頭の中で「どのように考え、理解しているのか」。
ここに、学力を伸ばすための重要なヒントがあります。
2025年10月7日付の毎日新聞「教育の森」に、認知科学者で慶應義塾大学名誉教授の今井むつみさんへの取材記事「『受験テクニック』がリスクに」が掲載されました。
この記事には、私が日頃から教育現場で感じている課題と重なる指摘が数多くありました。
今回は、今井さんの記事を紹介しながら、「何度教えても間違える」原因と、子どもの学力を伸ばすために本当に大切なことについて考えてみたいと思います。
今井さんの記事で、まず注目したいのが「受験テクニック」のリスクです。
テストで正解するためのテクニックを覚え、内容を十分に理解しないまま学習を進めることは、長期的には学力の伸びを妨げる可能性があるという指摘です。
これは、私自身も教育現場で強く感じていることです。
例えば、算数や数学の勉強。
公式を覚え、似たような問題を繰り返し解けば、テストで正解できるようになることがあります。
ところが、問題の出し方が少し変わると、途端に解けなくなってしまう。
なぜでしょうか。
それは、公式の使い方は覚えていても、その公式が何を意味しているのか、本質的には理解できていないからです。
例えば、割合の文章題。
「比べる量=もとにする量×割合」という公式を暗記していても、何が「もとにする量」なのかを理解できていなければ、問題の条件が変わったときに対応できません。
もちろん、公式を覚えることも、繰り返し演習することも大切です。
受験テクニックそのものが悪いわけではありません。
問題なのは、「なぜその答えになるのか」を理解しないまま、正解することだけを目的に勉強を続けてしまうことです。
こうした学習を積み重ねていると、決まったパターンの問題には対応できても、初めて見る問題や応用問題には対応できなくなってしまいます。
その結果、ある時期から学力が頭打ちになってしまうのです。
今井さんの記事では、数の概念に関する興味深い例が紹介されています。
山道を5時間10分歩き、そのうち登るのに2時間50分かかったとします。
では、下るのにかかった時間は何時間何分でしょうか。
この問題に対して、「510分」から「250分」を引こうとする子どもがいるそうです。
つまり、5時間10分を510分、2時間50分を250分と考えてしまうのです。
これは単なる計算ミスでしょうか。
そうではありません。
そもそも「時間」という単位の意味を十分に理解できていないのです。
今井さんは、こうした例を通して、数の性質や単位といった算数の基本的な概念を理解できていない子どもが少なくないことを指摘しています。
私自身も、計算問題は解けるのに、数や分数、割合の意味を十分に理解できていない子どもに出会うことがあります。
例えば、
「2分の1と3分の1では、どちらが大きい?」
という質問。
このとき、「3の方が2より大きいから、3分の1の方が大きい」と考えてしまう子どもがいます。
この間違いは、単に勉強していないから起こるわけではありません。
「数字が大きいほど量も大きい」という整数で身につけた考え方を、そのまま分数にも当てはめてしまっているのです。
このような間違いを理解するうえで重要になるのが、認知科学の「スキーマ」という概念です。
スキーマとは、私たちが経験や学習を通して頭の中に作り上げている、知識や理解の枠組みのことです。
簡単に言えば、物事を理解するときに使う「頭の中の考え方の土台」です。
私たちは新しいことを学ぶとき、それまでに身につけた知識や経験と結びつけながら理解しています。
ところが、その土台となる考え方が間違っていたら、どうなるでしょうか。
先ほどの分数の問題を思い出してください。
「数字が大きければ量も大きい」という考え方が頭の中にあると、2分の1と3分の1を比べるときにも、その考え方を使ってしまいます。
そのため、分数の大小を比較する問題を何度繰り返しても、同じ間違いをしてしまうことがあるのです。
つまり、単に正しい答えを教えるだけでは不十分です。
子どもが頭の中でどのように考えているのかを知り、必要であれば、その理解の枠組み自体を修正していかなければなりません。
根本のスキーマが誤っていると、一生懸命演習を繰り返しても、同じ間違いを繰り返したり、ある分野でつまずいて理解が進まなくなったりします。
こうした状態が、学力が頭打ちになる原因の一つだと私は考えています。
では、どうすれば子どもは、本当の意味で理解できるようになるのでしょうか。
ここからが、今回の記事で私が最もお伝えしたいことです。
それは、「教えること」と「子ども自身が理解すること」は、同じではないということです。
親や先生は、子どもが問題を間違えると、一生懸命、分かりやすく教えようとします。
図を描いたり、身近な例を使ったり、何度も説明したり。
もちろん、それも大切なことです。
しかし、どれほど丁寧に説明しても、子ども自身がその意味を考え、自分の知識と結びつけなければ、本当の理解にはつながりません。
例えば、先生の説明を聞いた子どもが、
「ああ、分かった!」
と言ったとします。
ところが、翌日同じ問題を解かせてみると、また間違えてしまう。
これは教育現場では決して珍しいことではありません。
先生の説明を聞いて「分かった」と感じることと、自分の力で問題を解いたり、他の人に説明したりできることには、大きな違いがあります。
いくら教わっても、自分の頭で考え、自分の知識と結びつけなければ、必要なときに取り出して活用できる「生きた知識」にはならないのです。
私は、ここが非常に重要だと考えています。
学力を伸ばすために必要なのは、ただ知識を教え込むことではありません。
子ども自身が考え、納得し、その知識を自分のものにしていくことなのです。
では、家庭ではどのようなことを意識すればよいのでしょうか。
私は、子どもが問題を間違えたとき、すぐに正解を教えるのではなく、まず次のような質問をすることをおすすめしています。
間違いを指摘する前に、子どもの考え方を聞いてみてください。
大人から見ると間違った答えでも、子どもなりには筋道があるかもしれません。
その考えを知ることで、どこで理解がつまずいているのかが見えてきます。
間違いの原因を子ども自身に考えてもらいます。
単なる計算ミスだったのか。
問題文の意味を理解していなかったのか。
それとも、そもそも基本的な考え方を誤っていたのか。
自分の理解を振り返ることで、学習の課題を明確にすることができます。
最後に大切なのは、次の学習につなげることです。
正解を確認して終わりにするのではなく、同じ間違いを防ぐために何が必要なのかを考えてもらいます。
もちろん、自分だけでは答えにたどり着けないこともあります。
そのときは大人がヒントを与えたり、一緒に考えたりすることも必要です。
大切なのは、子どもに考える機会を与えることです。
私が運営する個別指導塾スイングアカデミーでは、子どもたちに毎日「チャレンジノート」という日誌を書いてもらっています。
チャレンジノートには、自分の夢や目標、日々の予定、実際に取り組んだこと、そして振り返りを記入します。
その中でも特に重要なのが、1日のポイントを3つ挙げることです。
例えば、算数の分数を学習した日。
単に、
「今日は分数の割り算を勉強した」
と記録するだけではありません。
「分数の割り算では、なぜ逆数を掛けるのかが分かっていなかった」
「問題の数字だけを見て、何を求めるのか考えていなかった」
といったように、自分が理解できていなかったことや、学習を通して気づいたことを「自分の言葉」で書いてもらいます。
ここが非常に大切なポイントです。
先生から教わったことを、そのまま書き写すのではありません。
自分は何を理解できているのか。
何を理解できていないのか。
なぜ間違えたのか。
次はどうすればいいのか。
それらを自分の頭で考え、言葉にするのです。
自分の考えを言語化することによって、それまで曖昧だった理解や、自分自身の思い込みに気づくきっかけが生まれます。
そして、必要に応じて先生がその考え方を確認し、正しい理解へと導いていきます。
チャレンジノートは、単なる学習記録ではありません。
子ども自身が自分の学びを振り返り、「自分で考える力」を育てるための大切な取り組みなのです。
そして、スイングアカデミーが何よりも大切にしているのが「探究授業」です。
ここまで、子ども自身が考えることの重要性についてお伝えしてきました。
では、子どもが最も真剣に、自分から考えるのはどのようなときでしょうか。
私は、それは「自分が好きなこと」「興味のあること」「自分の夢」に向き合っているときだと考えています。
例えば、ゲームが大好きな子ども。
もっと上手になりたいと思えば、自分から攻略方法を調べ、試行錯誤し、失敗した原因を分析します。
誰かに「考えなさい」と言われなくても、夢中になって考えるのです。
将来、パティシエになりたい子どもなら、お菓子作りを通して材料の分量や割合に興味を持つかもしれません。
宇宙飛行士になりたい子どもなら、宇宙に関するニュースをきっかけに、科学や数学をもっと学びたいと思うかもしれません。
このように、自分の興味関心や夢は、学びを「自分ごと」に変えてくれる強い原動力になります。
スイングアカデミーの探究授業では、世界のニュースや偉人たちの人生に触れながら、子どもたちが自ら問いを立て、自分の考えを深め、夢や目標を言葉にしていきます。
「なぜ、こんなことが起こったのだろう?」
「自分だったら、どうするだろう?」
「自分は将来、どんなことに挑戦したいだろう?」
こうした問いには、あらかじめ決められた正解がないものも多くあります。
だからこそ、自分自身の頭で考えなければなりません。
そして、友達や先生と意見を交わしながら、異なる考え方に触れ、自分の考えを深めていきます。
これは、単に知識を覚える学習とは異なる取り組みです。
自分で問いを立て、考え、判断し、自分の言葉で表現する。
まさに、自分で考える力を育てる学習なのです。
もちろん、探究授業を受けるだけで、算数や数学の苦手分野がすべて解消されるわけではありません。
数や言葉の基本概念を丁寧に理解していく学習も必要です。
しかし、探究授業を通して、自ら問いを立て、自分の頭で考え、その考えを自分の言葉で表現する習慣を身につけることは、まさに「自分で考える力」を育てることにつながります。
そして、この「自分で考える力」こそが、教科学習においても、単に知識を暗記するのではなく、物事を深く理解し、学んだ知識を活用するための大切な土台になると私は考えています。
「教えられたことを覚える学習」から、「自分で考え、理解し、活用する学習」へ。
スイングでは、探究授業と教科学習を結びつけながら、そんな学びを実現したいと考えています。
「何度教えても、また間違える」
「毎日勉強しているのに、成績が上がらない」
そんなとき、私たち大人は、つい「もっと分かりやすく教えなければ」「もっと練習させなければ」と考えてしまいます。
しかし、本当に必要なのは、教える量や問題演習の量を増やすことだけではないのかもしれません。
子どもが頭の中でどのように考えているのか。
どこで理解がつまずいているのか。
どうすれば自分の力で考え、理解できるようになるのか。
そこに目を向けることが大切なのだと思います。
私は、子どもたちが「自分で考える力」を身につけることこそ、これからの教育に欠かせないと考えています。
そして、その力を育てる大きな原動力になるのが、一人ひとりの「好き」という気持ちや「夢」です。
勉強は、単にテストで良い点数を取るためだけのものではありません。
自分の夢を実現し、未来を切り拓いていくためのものです。
子どもたちが自分で考える喜びを知り、学ぶことに夢中になれる。
そんな教育を、一人でも多くの子どもたちに届けていきたいと思います。
スイングアカデミーは、横浜みなとみらい教室と全国オンラインで、子どもたち一人ひとりの可能性を伸ばす教育に取り組んでいる個別指導塾です。
教科学習による学力向上だけでなく、子どもの興味関心や夢を大切にし、自分で考え、学び、挑戦する力を育てることを目指しています。
「勉強しているのに成績が伸びない」
「何度教えても、同じ間違いを繰り返してしまう」
「自分から考え、勉強する子になってほしい」
そんなお悩みをお持ちの保護者の方は、ぜひ一度、スイングアカデミーの教育について知っていただければと思います。
スイングアカデミー公式サイト
https://swing-jyuku.jp
執筆:藤野雄太
好きを探して究める探究教育家
個別指導塾スイングアカデミー代表
著書:『勉強しなさいと言わずに成績が上がる!すごい学習メソッド』
参考:毎日新聞 2025年10月7日付「教育の森」『受験テクニック』がリスクに(今井むつみさんへの取材記事)
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