子どもがChatGPTなどの生成AIを使って勉強したり、調べ物をしたりすることが当たり前になりつつあります。
一方で、保護者の方からは、こんな声も聞かれます。
「AIに頼りすぎると、自分で考えなくなるのでは?」
「ChatGPTで宿題をするのはよくない?」
「子どもの考える力を伸ばすAIの使い方って、具体的にどうすればいいの?」
先日、私がXに投稿した教育記事にも、次のようなコメントをいただきました。
「考える力を伸ばすAIの使い方って実際どんな使い方ですか? 今、息子達は普通にChatGPTとか使いながら調べ物してたりします」
これは、AI時代の子育てや教育を考えるうえで、とても重要な問いです。
結論から言えば、子どもがChatGPTを使うこと自体が悪いわけではありません。
大切なのは、AIに考えることを任せるのではなく、AIを使って自分の考えを深めることです。
今回は、認知心理学やAIを活用した学習に関する研究、そしてスイングアカデミーが大切にしている探究教育の視点から、子どもの考える力を伸ばすAIの使い方を5つご紹介します。
ChatGPTの大きな特徴は、質問すると短時間で答えを得られることです。
算数の解き方、理科の疑問、歴史上の出来事、英語の翻訳など、さまざまなことをわかりやすく説明してくれます。
しかし、教育という視点で考えると、この便利さには注意が必要です。
認知心理学者の今井むつみ氏は、新聞のインタビューで、自分の頭で推論し、仮説を立て、検証しながら学ぶことの重要性を指摘しています。
例えば、算数の問題を解くとき。
まず自分で考える。途中で間違える。なぜ間違えたのかを考え、別の方法を試す。
こうした過程を通して、子どもは理解を深めていきます。
ところが、わからない問題をすぐにChatGPTに入力し、解答を写すだけでは、この大切な経験を十分に積むことができません。
つまり、AIを使って正解できたことと、自分自身の力で正解できるようになったことは、必ずしも同じではないのです。
2026年7月24日付の毎日新聞では、米ペンシルベニア大学の研究チームによる、高校生を対象としたAI学習の研究が紹介されています。
この研究では、答えを示すAIと、ヒントを出して考えさせるAIなどを比較しました。
その結果、答えを教えるAIを使った生徒は練習中の成績が向上したものの、AIを使わない試験では成績が低下する傾向が見られました。
一方、ヒントを与えて考えさせるAIを利用した生徒には、同様の成績低下が見られませんでした。
もちろん、この研究だけでAI学習の効果をすべて判断することはできません。
しかし、少なくとも「AIが答えを教えてくれる学習」と「AIが自分で考えることを支援する学習」は、区別して考える必要があるでしょう。
例えば、小学生が「虹はどうしてできるの?」と疑問を持ったとします。
【答えを教えてもらう使い方】
ChatGPTに「虹ができる理由を教えて」と質問する。
AIの説明を読んで、そこで終了する。
これでも知識を得ることはできます。
しかし、考える力を伸ばすには、もう一歩踏み込んでほしいのです。
【考える力を伸ばす使い方】
まず子ども自身が予想します。
「雨粒に太陽の光が当たるからかな?」
そのうえでChatGPTに質問します。
「僕は、雨粒に太陽の光が当たるから虹ができると思うんだけど、合っているかな? すぐに正解を教えず、考えるヒントを一つずつ出して」
すると、AIは単に答えを教える道具ではなく、自分の考えを深めるための対話相手になります。
ポイントは、最初に子ども自身が考えること。
AIはその考えを広げたり、深めたりするために活用するのです。
ここからは、小学生や中学生のご家庭で実践できるChatGPTの使い方をご紹介します。
子どもが何かを調べるとき、最初に自分で考える時間を設けましょう。
例えば「恐竜はなぜ絶滅したの?」という疑問。
まずは、
「大きな隕石が落ちたから?」
「地球の気温が変わったから?」
と、自分なりに予想します。
その後、ChatGPTに次のように質問します。
【おすすめの質問例】
「恐竜が絶滅した理由について、僕は〇〇だと予想しています。この予想を確かめるには、何を調べればいいですか?」
このように使えば、AIから答えを受け取るだけでなく、仮説を立てて検証する学習につながります。
算数や数学の問題でわからないところがあったときも、AIに答えを求めるのではなく、考えるためのヒントをもらいます。
【おすすめの質問例】
「この問題を自分の力で解きたいです。答えは教えず、僕がどこまで理解できているか質問してから、ヒントを一つずつ出してください」
AIが質問をして、子どもが答える。
そのやり取りを重ねることで、自分で考えながら問題を解く練習ができます。
ただし、AIの解説が間違っている場合もあるため、教科書や先生の解説と照らし合わせて確認することも大切です。
考える力を伸ばすには、一つの視点だけでなく、多角的に考える経験も重要です。
例えば「小学生もスマートフォンを自由に使ってよいと思う」という意見があったとします。
【おすすめの質問例】
「僕は小学生もスマートフォンを自由に使ってよいと思います。反対する人は、どんな理由を挙げると思いますか?」
AIとの対話によって、自分では気づかなかった考え方に出会うことができます。
そして、異なる意見を比較しながら、自分自身の結論を考えるのです。
ChatGPTは非常に便利ですが、間違った情報を答えることもあります。
そのため、AIの答えをそのまま信じるのではなく、根拠を確認する習慣が必要です。
【おすすめの質問例】
「その説明には、どんな根拠がありますか? 自分で正しいか確認するには、何を調べればよいですか?」
そして、実際に図鑑や書籍、公的機関の資料などで確かめてみます。
AIの回答に示された出典自体が不正確な場合もあるため、リンク先の内容まで確認することが重要です。
このような学習を通して、情報の真偽を見極める力を育てることができます。
最後におすすめしたいのが、調べたことを自分の言葉で説明する方法です。
AIで調べ終わったら、画面を閉じて、お父さんやお母さんに説明してもらいます。
「今日調べてわかったことを、1分間で説明してみて」
もしうまく説明できなければ、理解が不十分なところが残っているのかもしれません。
その部分をもう一度調べたり、考え直したりします。
AIの説明を読むだけで終わらず、自分の言葉でまとめて伝える。
こうした活動は、学んだ知識の理解を確認し、定着させるうえでも大切です。
ここまで、子どもの考える力を伸ばすAIの使い方をご紹介しました。
しかし、探究教育に取り組む私が最も大切にしているのは、AIの使い方そのものではありません。
それは、子どもの「好き」「なぜ?」「もっと知りたい!」という好奇心を学びにつなげることです。
例えば、昆虫が大好きな子どもがいたとします。
「カブトムシは、どうしてあんなに力が強いのだろう?」
そんな疑問を持ったとき、すぐにAIに答えを聞くのではなく、まず自分で予想してみます。
「体の形に秘密があるのかな?」
「筋肉のつくりが違うのかな?」
そのうえで、ChatGPTを使って調べる方法を考えます。
「カブトムシの力の強さについて調べたいです。ほかの昆虫と比較するなら、どんなことを調べればいいですか?」
そして、図鑑を読んだり、実物を観察したり、詳しい人に質問したりして、自分の仮説を確かめていきます。
調べてわかったことは、自分の言葉でまとめて発表する。
こうして、一つの「好き」から、生物の体の仕組み、力学、生き物の進化など、学びが広がっていくのです。
これからの時代、知識を得るだけであれば、AIが多くのことを助けてくれます。
しかし、
「何を知りたいのか?」
「なぜ、それを知りたいのか?」
「知ったことを使って、何に挑戦したいのか?」
こうした問いは、子ども自身が見つけていく必要があります。
スイングアカデミーの探究授業では、世界のニュースや偉人の生き方、子ども自身の興味関心などを題材にしながら、好奇心を刺激し、自分で考え、発信する学びを大切にしています。
AIは、その探究活動を広げる強力な道具になり得ます。
ただし、AIとの対話だけで学習を完結させるのではなく、実際に調べる、観察する、行動する、人と話すといった経験も欠かせません。
AIを使いながら、自分の頭で考え、現実の世界で試してみること。
この両方を大切にしたいと考えています。
ここまで読んで、「家庭でもいろいろな工夫が必要なのだろうか」と思われた方もいるかもしれません。
もちろん、今回ご紹介した5つの方法を実践していただけたらと思います。
ただ、それよりも先に、ぜひ試していただきたいことがあります。
お子さんが、
「ChatGPTで調べたよ!」
と言ったときに、こう聞いてみてください。
「それで、あなたはどう思った?」
とてもシンプルな一言です。
でも、この質問によって、会話の中心が「AIが何と答えたか」から「子ども自身がどう考えたか」に変わります。
そして、
「どうしてそう思ったの?」
「ほかの考え方もあるかな?」
「自分で確かめるとしたら、どうする?」
と会話を広げることができます。
親が正解を教えることよりも、子ども自身が考えを深められるように関わること。
これはAIを使うときだけでなく、普段の家庭学習や子育てでも大切にしたい姿勢です。
なお、子どもがChatGPTなどを利用する際は、各サービスの利用年齢や保護者の同意に関する規定を確認し、氏名・学校名・住所などの個人情報を安易に入力しないことも大切です。
AIはこれからの社会で、ますます身近な存在になっていくでしょう。
だからこそ、子どもたちには、AIを避けるのでも、AIにすべてを任せるのでもなく、適切に活用する力を身につけてほしいと思います。
今回ご紹介した5つのポイントを振り返ります。
1.AIに質問する前に、自分の予想を立てる
2.答えではなく、考えるためのヒントをもらう
3.自分と違う意見を聞いて、多角的に考える
4.AIの答えをうのみにせず、自分で検証する
5.最後はAIを閉じ、自分の言葉で説明する
そして、これらの学びの出発点となるのが、子ども自身の好奇心です。
何を知りたいのか。何を究めたいのか。どんな未来を実現したいのか。
私は、子どもたちが自分の「好き」を見つけ、それを夢や挑戦につなげていける教育を広げたいと考えています。
AIはその可能性を広げるための道具です。
でも、考えるのも、挑戦するのも、未来を切り拓くのも、子ども自身なのです。
スイングアカデミーは、横浜みなとみらい教室と全国オンラインで学びをサポートする個別指導塾です。
「好き」を見つけて究める探究授業を通じて、子どもたちの好奇心や主体性を育み、自ら学びに向かう力を伸ばすことを大切にしています。
お子さまの学習意欲や勉強への向き合い方でお悩みの保護者の方は、ぜひホームページをご覧ください。
公式サイト:https://swing-jyuku.jp
執筆:藤野雄太(好きを探し究める探究教育家/スイングアカデミー代表)
著書:『勉強しなさいと言わずに成績が上がる!すごい学習メソッド』
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