こんにちは、藤野雄太です。
私たち人間を含め動物は自分の意志で行動をしています。
これは本当でしょうか?
もしも、他の何者かが陰で動物の行動を操っているといたら、あなたは信じますか?
実は、その「もしも」が現実に存在するのです。
動物の行動を陰で操る招待とは・・・。
それでは本日の新聞記事を読んでいきましょう。
【2022/12/4 日経新聞】
大自然を生きる動物たちは生存競争を勝ち抜き、次代にバトンをつなぐための行動力を磨き上げてきた。奔放で勇猛果敢な振る舞いは自由の象徴でもある。だが、その行動が自らの意思ではなく、誰かの手のひらで転がされているだけだったとしたら景色は一変する。みえてきたのは、自然界を陰で操る存在だった。
オオカミにとって群れのリーダーに名乗りを上げるのは大きな決断だ。才覚のあるものだけが務まる地位だからだ。
米国イエローストン国立公園にすむハイイロオオカミにもリーダーがいる。トップにたつ資質をひもといた米国モンタナ大学などのチームが11月末に発表した論文は、目を疑うような内容を伝えていた。
「群れのリーダーになる可能性は46倍以上に高まる」。チームのコナー・マイヤー氏は続ける。ある種の寄生体を宿すオオカミは「リーダーになりやすい。リスクを冒す傾向が強い」。寄生体がボスを指名するのか。リーダー像が覆った。
1995~2020年に採取したオオカミ229匹の血液から、トキソプラズマという小さな寄生虫が感染した痕跡を調べた。この寄生虫はネコ科動物の腸を生まれ故郷とし、他の動物も渡り歩く。同公園にいる大型ネコ科動物ピューマは故郷の一つだ。健康であれば症状はほとんど出ないが、脳や筋肉に巣くう。
寄生体がオオカミに何をしたのかはよくわからないというが、チームの一人は「脳を操っている気がする。ホルモンの分泌を変え、リスクの高い行動を促しているのかもしれない」と疑う。
そこから浮かぶ仮説はこうだ。寄生体はピューマのフンなどを口にしたオオカミに感染し、やがて脳に居座る。脳を乱して攻撃性を高め、野心をかきたてる。こうした気質がリーダーへと導いていく。
気が大きくなったリーダーは、ピューマのそばにも群れを連れていく。ネコ科動物に近づけば、仲間にも寄生する危険がある。寄生体は身ごもった子や弱った体には悪さをする。
陰の支配者は存在の根拠が実験で積み上がっている。「トキソプラズマに感染したネズミはネコのにおいにも恐れずに近づく」と帯広畜産大学の西川義文教授は話す。感染したばかりの急性期や再活動期は鬱に似た症状が出る。
西川教授はいう。「恐怖はどうでもいいとネズミに思わせてネコが食べてくれたら、ネコの体で有性生殖をするトキソプラズマにとって都合がよい」
この世界には様々な陰の支配者がおり、予想以上に大きな力を振るっている。
京都大学の佐藤拓哉准教授はカマキリが川や池に次々と飛び込む現象を追っている。21年、カマキリの光を感じる力をおなかに寄生したハリガネムシが惑わしているらしいと佐藤准教授(当時は神戸大)らは突き止めた。この仕組みは100年以上前から謎だった。
「指令」を受けたカマキリは水面の反射光が含む水平偏光に魅入り、水の中に落ちる。ハリガネムシは水中で繁殖し、複数の虫を巡り歩く。水中に戻るには生涯の終盤ですみ着いた陸の虫を水辺に誘う必要があった。水死した虫は多くの魚を育み、生態系を支える。寄生体の影響力は絶大だ。
その力は人間にも向かう。ストックホルム大学のアントニオ・バラガン博士は、トキソプラズマが動物を支配下におけるのは「免疫細胞を乗っ取り、タクシーを使うように腸から血管、臓器へと動き回れるからだ。人間の免疫系を私たちよりも熟知する」という。脳にも入り、健康を損ねずに息を潜める。既に人類の3分の1以上に寄生しているとの情報もある。
【語句の意味】
★寄生(きせい):生物が、栄養の大部分や暮し場所を他の生物体(宿主)に一方的に依存して生活すること。
★仮説(かせつ): 一定の現象を統一的に説明できるように設けた仮定。
仮定:実際とは無関係に想定されること。何かの現象を説明するために一応想定されること。
★免疫(めんえき): 生体が疾病、特に感染症に対して抵抗力を獲得する現象。
[広辞苑 第七版]
【探究テーマ】
「トキソプラズマの感染率が高い国にサッカーの強豪国が多い」という分析結果があります。
トキソプラズマの感染率とサッカー強豪国には因果関係があるかどうかを考えてみよう。
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