こんにちは、藤野雄太です。
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2014年の東大入試問題でロシアの対外政策に関する問題が出題されました。
ウィーン会議から19世紀末までの時期、ロシアの対外政策がユーラシア各地の国際情勢にもたらした変化について西欧列強の対応に注意しながら論じなさいという問題です。
まさに、今ウクライナで起きている戦争にかかわる問題です。
それでは本日の朝日新聞を読んでいきましょう。
【3/17朝日新聞】
<問> 2014年東京大学 世界史
19世紀のユーラシア大陸の歴史を通じて、ロシアの動向は重要な鍵を握っていた。ロシアは、不凍港の獲得などを目ざして、隣接するさまざまな地域に勢力を拡大しようと試みた。こうした動きは、イギリスなど他の列強との間に摩擦を引きおこすこともあった。
以上のことを踏まえて、ウィーン会議から19世紀末までの時期、ロシアの対外政策がユーラシア各地の国際情勢にもたらした変化について、西欧列強の対応に注意しながら、論じなさい。(一部改)
<解説>
クリミア半島をめぐるウクライナ騒乱があった2014年に出題された問題です。偶然かもしれませんが、現在に続く問題を予見するかのようです。今の高校生にとっては、国家と国家が衝突する本格的な戦争を目の当たりにするのはほとんど初めてのことではないでしょうか。
世界史を学ぶ子どもたちには、「こんなことを学んで何になるんだろう」と思う人もいるかもしれません。ですが、世界史を学ぶことが、いま世界で起きていることを理解するうえで手助けになるということを知ってもらいたいと思います。私たちが過去の歴史を学ぶのは、現在を理解する基礎になるからです。
さて、本題に入ります。まずロシアがどんな国かおさえておきましょう。現在の人口は約1億4千万人、国土の面積は世界最大です。しかし、その約60%は永久凍土やツンドラと呼ばれる凍土帯で、人が住めるところは半分もありません。
多くの海岸が凍っているため、空路がなかった19世紀、貿易で経済的な利益を得るためには、一年を通して使える「不凍港」の獲得が国家にとっての重要な目的でした。
これが、より暖かい土地を求めて南をめざす「南下政策」です。具体的には、バルト海、黒海・地中海、インド洋、太平洋の四つの海をめざし、ポーランドやクリミア半島、西アジアなどに進出して領土拡大を図ります。
こうした動きに立ちはだかったのが、英国です。当時英国はインドを植民地化し、勢力を拡大していました。オスマン帝国の領土をめぐって欧州列強が争った東方問題も、こうした文脈に位置づけることができます。
20世紀初めの日露戦争も、南下政策で太平洋をめざしたロシアが、朝鮮半島に目をつけた結果、日本との衝突に発展しました。現在、日本とロシアとの間には北方領土をめぐる問題がありますが、拡大を図るロシアの動きは、歴史的に日本と無関係ではありません。現在のウクライナ侵攻の背景には、ロシアに根ざす大国主義があると考えます。
■冷戦の終結めぐり、歴史観に大きなずれ
列強が争った19世紀には、現代にはない一定の「ゲームのルール」があった。そう指摘するのは、ロシアの近現代史に詳しい静岡県立大学の浜由樹子准教授だ。
当時の欧州列強は、キリスト教という共通の文化的基盤をもち、国力もほぼ同等。国家間に貴族同士の血縁関係もあった。同盟関係も流動的で、「相手を再起不能にするまでたたきのめす、ということはなかった。衝突は各地で起きていたが、欧州での全面戦争は起きていない」と浜准教授は言う。
しかし、2度の世界大戦と東西冷戦を経て、現在の対立は構図も質も大きく異なっている。NATO(北大西洋条約機構)やEU(欧州連合)の国々は、民主主義や自由・人権という共通の価値観をもつ。対するロシアは、「米国による価値の押しつけ」に反発し、反リベラリズムを明確にしている。両者は経済的に圧倒的な差がある。
米国にとって冷戦終結は「自由主義の勝利」だが、ロシアにとっては、ペレストロイカに端を発した東西の「和解」だった。対立の背景には、こうした歴史観の大きなずれがあると浜准教授は指摘する。ロシアとウクライナが停戦に至っても、こうした双方の隔たりを越えて着地点を見いだすのは難しいという。
浜准教授は「今回のウクライナ侵攻を正当化できる要素はまったくない。ただ、ロシアを完全に孤立させてしまうと、新たなリスクとなる可能性がある。ロシアに代償を払わせようとする各国の世論とのバランスのなかで、どこまでロシアを包摂した枠組みをつくれるかがポイントになる」とみている。
<解答例>
バルト海方面へは、ウィーン議定書でポーランドを事実上のロシア領とすることで沿岸を確保することに成功した。黒海・地中海方面へは、ギリシャ独立戦争に介入して進出を図ったが、イギリスがインド航路の安全確保の立場から対抗したため、19世紀を通じて東方問題と呼ばれる紛争が続いた。
2度にわたるエジプト=トルコ戦争では、イギリスの主導するロンドン会議で進出は阻止され、クリミア戦争でもオスマン帝国を支援するイギリス・フランスに大敗、パリ条約が結ばれて黒海の中立化が決定した。露土戦争では、サン=ステファノ条約を締結してブルガリアの保護権を獲得することで南下を成功させたが、イギリス・オーストリアが猛反発したためビスマルクがベルリン会議(1878年)を開催して調停、ブルガリアを放棄させてロシアの南下を断念させた。
ペルシャ湾やインド洋方面へは、イラン=ロシア戦争の末にトルコマンチャーイ条約を締結してアルメニアを獲得、中央アジアでもウズベク3ハン国を併合し、中国清朝からはイリ地方を奪った。これに対してイギリスはインド防衛のためアフガニスタンを保護国化して対抗した。
太平洋方面では、アロー戦争ののちに北京条約を結んで沿海州を獲得、ウラジオストクを建設した。また日清戦争の後には三国干渉を経て東清鉄道を敷設、さらに遼東半島の旅順・大連を租借して鉄道の支線を敷設した。これに対してイギリスと日本は警戒を強めることになった。
【語句の意味】
★不凍港(ふとうこう):高緯度の海面凍結地域にありながら、暖流の影響などで海面が冬に凍結しない港。
★動向(どうこう):
心のうごき。事態の情勢、または個人・集団などの行動の現況や将来の方向。なりゆき。うごき。
★ 隣接(りんせつ):となりあってつづくこと。近隣関係にあること。
[広辞苑 第七版]
【探究テーマ】
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